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January 19, 2005

書談:『波のかたみ 清盛の妻』

『波のかたみ 清盛の妻』
著者:永井路子
出版:中公文庫
価格:895円(税別)

いつのころからか、源頼朝が好きだった。
日本史を習った小学生のころだろうか。
平家は貴族風の暮らしをしていて、ずるっこしい、という印象がある。
琵琶法師の「平家物語」ってのは陰気くさいなあと思っていた。

源氏好きなのは、関東地域に育ったからのようだ。鎌倉が近いから。
関西以西は平家好きで、北陸東北は義経好きなのかなあとか思った。

平家には平家の義、があるらしい。
そんななよなよした家系でもないことが本書からわかった。

清盛・時子は、ベンチャー企業の二代目社長夫婦といった感じ。
上場はできたので、全国展開をはかる。その当時は「事業家」になるには、政治家でもあれなばならなかったのね。
政治力を獲得するのに腐心したが、結局その政治工作が仇となり、自らの敗退を招いた。後継者が育ちきらないうちに当主が死んじゃったからねえ。

この後に読んでいる司馬版『義経』に書いてあるのだが、
平家は源氏と違い、情緒豊か。頼朝、義経らを生かしたのもその情からくるものである。後生に「平家物語」が生まれるのも、その心情が民衆を惹きつける。
そういえば、源氏も三代で滅ぶが、そんな情緒的な物語はないものなあ。
北条家が実質的に政治力を継いだという権力の構造だけではなく、人々が懐かしむ詩情が源氏にはないのだ。(そこが私は好きなんだけどね)

本書にはなぜか、義経のことは全然出てこないのだ。頼朝が伊豆に流される過程はそれなりに出てくるんだけど。義経の母、常磐御前に時子は嫉妬するんじゃないだろうか。平家が滅ぶ直接的原因は義経にあるんじゃないだろうか。時子は幼少の義経にも会っているはずだが。平家物語を450ページに収めてあるのだから、詳細を触れない人物もいるのだが、義経は省いていいもんなのだろうか。

という疑問は残るが、読んでよかった作品だ。
さすが「歴史のおばば」である。
『北条政子』という大作を書いた永井さんが平時子に着目するのは必須といえよう。
偶然かもしれないが、政子にも義時という政治的に有能な弟がいて、時子にも時忠という義弟がいる。これはまたまた興味深いことである。

政治で失敗しなければ、時子も安徳天皇も死なずにすんだんような気がする。
永井さんは時忠に「敗れたには武門の平家であって、我が血筋の公家平家は生きている」と言わせている。

つまり、武門と公家政治と融合した(はずの)システムはバグを起こしてしまって、平家は滅びたのである。

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