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June 11, 2006

書談『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

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■『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
著者:米原 万里
価格 : \580 (本体 : \552)
出版 : 角川書店(文庫)
発行年月 : 2004.6

お互い米原さん信望者?ということで意気投合したpiaopengさんの一押しということで読んでみました。

米原さんは1960-1965の5年間、当時チェコスロバキアの首都プラハのソビエト学校(小中学校くらいだろうか)に通う。米原さんのお父さんは、日本共産党員として、その代表として、ここプラハにある国際的な共産主義運動理論誌の編集員として勤めている。
この状況が説明もなく、なんとなくわかる日本人は私の年代くらいまでであろう。もうソビエトはないし、プラハは現在チェコ共和国の首都である(実はちょっと知識があやふやだったのでぐぐって確認しました)。

このソビエト学校には近隣の社会主義、共産主義国の子弟が多く通う、つまり異邦人の学校なのである。えーと、日本は過去も現在も共産圏になったことはないですよね( ̄▽ ̄;)。まあ、彼女は彼女で微妙な立場なのである。そこいらへんも描かれています。

本書はその中で米原さんが仲の良かったギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア連邦のヤスミンカ、3人の女の子と各との当時の交流、そして、その後の「プラハの春」、及び約四半世紀後に起きた共産圏の崩壊のおいて、彼女たちがたどった道を記したものである。

もう私は21世紀に生きているので、この可憐な少女たちが過酷な運命をたどるのはわかっている。彼女たちはどう生き抜いていくのだろう。それはある種ミステリを読むかのようなどきどき感があった。

3人それぞれ個性的なのだが、私が好感を持ったのはリッツァである。勉強はさっぱりだが、男女や性の知識にはかなりなスペシャリスト?日本の学校にもリッツァのような子はクラスに一人くらいはいるのではないか、というのがお気に入りの理由である。明るくて頼りになる。彼女のような子とは一番に友達にならなくてはいけない。そんな、彼女も「プラハの春」によって大きく運命を変えられてしまい、一家離散を余儀なくされる。

大人になった米原さんは80年代の後半に、リッツァを含む嘗ての同級生を捜す旅に出る(順番から行ってリッツァを一番先に見つけたということだろうか)。なんとあの勉強嫌いのリッツァが名門の医学部を卒業して医者になっているという。彼女の努力は並々ならぬもので、尊敬すべきものであったろうが、政変はそれだけ彼女の人生に過剰なプレッシャーをかけたとも言える。

物心つく前にギリシアを出たはずのリッツァであったが、そのギリシアの青い空のすばらしさを少女のころから自慢していた。今となっては、そのギリシアに住めるはずだが、彼女が夫と子供と住んでいるのはドイツである。リッツァだけでなく、他の二人も祖国を愛しながら、そこに住居はない。

米原さんは三人との友情は切々と語るが描写は飽くまで淡々としている。それによって余計に、20世紀末に起こった政治変革の重大さを私たちに伝えてくれる。

彼女たちはもう50半ばを越している。しかし、彼女たちの体験は昔話ではない。今も継続している現実である。私が晩年を迎えるころには彼女たちの物語は昔話になるのだろうか。そのころには新たな悪夢が始まっているのではないかと心配でならない。

本書が偉大な異文化コミュニケーター米原万里の名前と共に、半永久的に読み続けることを切に願っている。

いや、そんな暗いお話じゃないんですよ。米原節が一番効いている美しいエッセイです。皆さんも是非お読みください。じゃあ、今日も『人気blogランキング』ぷちっとしておいて下さい。【押す】
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