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August 31, 2006

書談:『誰が本当の発明者か』

Daregahatumei
■『誰が本当の発明者か』
-発明をめぐる栄光と挫折の物語-
著者:志村幸雄
発行:2006/08/20
出版:講談社ブルーバックス
定価:987円

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大江秀房氏の件で、ブルーバックスから科学史本が倦厭されるのではないかと心配したが、このような本が出版されてほっとした。
以前から執筆依頼をうけていただだろうし、中村修二の裁判の影響だろうとは思うが。

"発明の歴史は「人と金と裁判の歴史」だった"
と帯に記載してあるが、まあ、そういうことです。先取権争奪戦ですね。

講談社HPでピックアップしているタイトルの内容を書いてみます。


●エジソンは白熱電球の25番目の発明者!?

 日本人的にはエジソン電球といえば京都産の真竹ですが、白熱電球を完成させたのは英国生まれのジョセフ・スワンです。エジソンは改良して長時間使用に耐えるようにしたわけです。それよりも、エジソンの功績は白熱電球の大量生産化、事業化したことでしょう。エジソン自身も自分の最大の発明は?という問いに「白熱光による照明と送電システム」と答えているそうです。


●ワットは単なる改良家!?

 蒸気機関の実用化に成功したのはニューコメン。その機関の熱効率を上げるために、シリンダーから冷却機を分離したのはワットです。どうでしょうね。ワットを「単なる」改良家と位置づけるのは(だから!?がついているわけですが)。教科書的記述だと、○○の発明者は××というふうに一人に限定して書くのが誤解を生んでいるでしょう。パパン、サヴァリーまで書かなくても、蒸気機関の実用化に貢献したニューコメン、ワット、くらい挿入しても罰はあたらないでしょう。


●アークライトは発明の盗人!?

 水力紡績機の事業化でナイトの称号を得たリチャード・アークライトですが、素行のよくない人ですな。特許訴訟で負けるのはともかくも、他の技術者を脅して設計図を手に入れるとか、模倣、盗作、えっ、成功すればそれでOKなの?
 本著には「紡績機の発明者ではなかったが、紡績産業を生み出したのは高く評価されてよい」と書いてありますが、そうなのかなあ。


●2時間差でベルに敗れた男とは!?

 イライシャ・グレイですね。当時の米国特許局に申請するのが二時間遅かったと言われています。一説にはベルの顧問弁護士がグレイの発明関係を察知して、独断で出願したとあるそうです。
 最近はあまり言われませんが、一刻でも早く特許出願を、という教訓によく使われました。今は日にちだけで同日で時間を争うということはないので。


●高峰譲吉はなぜ「発明者」になれなかったか!?

 欧米中心の科学研究の時代において、極東の日本人のやることなど鼻から無視されていた。これは学術的な研究上だけであり、産業界ではあまり関係なかったようです。高峰は新しいアルコール醸造法を発見し、米国のウイスキー会社に招聘されています。結局は、米国の競合他社に商売敵としてバッシングにあうわけですが。
(本書にはアドレナリンの発明者としての高峰が主に描かれています)
 高峰、北里柴三郎、鈴木梅太郎、長岡半太郎など、明治期に創造的な科学者を生みながら、近年、日本に、物まね・後追いのレッテルを貼られるのを見ると、何か高峰に周辺にその縮図を見るような気がします。つまり、米国等の研究者のお墨付きをもらって研究していく以外、世界の科学研究の舞台に登ることは不可能である、好きで改良だけをしているのではなく、折角基礎研究をしても、世界舞台にお披露目することはない、その対抗策として、海外研究結果重視になっているのではないでしょうか。
 無論、現代は、海外からの縛りが顕著でないにも関わらず、日本人が「自主規制」をしているところに問題があるのです。

 このような昔の事例だけではなく、トランジスタラジオ、光ファイバ、青色ダイオード、パソコンに関して言及しています。

 通読して損はしない一冊です。

技術発明はいかに事業化できるか、まで考えないと先取権は取得は難しいようです。まあ、今日も「人気blogランキング」ぷちっとな。【押す】
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