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January 16, 2007

書談:内井惣七『空間の謎・時間の謎』

Uchujikannazo■『空間の謎・時間の謎 -宇宙の始まりに迫る物理学と哲学-』
著書:内井 惣七著
価格: \840 (本体 : \800)
出版: 中公新書
発行: 2006.1
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橋元 淳一郎の『時間はどこで生まれるのか』を手に取ったのだが、これより前に読むべきのがあったはず、と思い出したのが本書である。科哲とか勉強していると、物理一辺倒の時間論はなんだか物足りない気がするのだ。なのになぜこれを売り出したときに読まなかったかというと竹内さんの『よくわかる最新時間論の基本と仕組み』を読んでいたからだ(あれ、これは記事に取り上げていないね)。

で本書の内容。
第1章 空間とは?時間とは?
第2章 ライプニッツとニュートンは何を争ったか
第3章 ニュートンのバケツから相対性理論まで
第4章 マッハ流力学の行方
第5章 宇宙と量子

本書の基幹理論は第2章である。著者内井さんは、17世紀にニュートンとの論争に負けたかに見えるライプニッツに物理理論は現代に活きていると主張している。
例えば以下のように

「ライプニッツはエネルギー概念の支持者、ニュートンらは運動量概念の支持者だと考えて大過ない。ところが、悪いことに「力」というアイマイな言葉を使って論争がおこなわれることもしばしばで(たとえば、運動エネルギーは「活力」と呼ばれた)、いろいろと行き違いが起きたのである。ちなみに、ライプニッツの力学論文では、力が「能動的、受動的」と二分され、それぞれがまた「原初的、派生的」と二分されて実にややこしい構成となっている。

ライプニッツが「腕の悪い時計職人」の比喩を使ってかみついているのは、「宇宙の中で運動が失われる傾向にある」というニュートンの見解である(『光学』問い 31)。たとえば、惑星系において彗星などとの相互作用が重なって運動が失われれば、不規則性が生じて増加し、「やがては改革を必要とする」(『光学』問い 31、終わりのほう)。この「改革」とは、神が自然現象に介入する(「時計職人がネジを巻く」)ということではないのか。

これに対し、ライプニッツ自身は「能動的な力は世界において保存される」と一貫して主張する。この「能動的な力」をどう解釈するかという問題はあるが、十九世紀に確立されたエネルギー保存則のようなものを十七世紀末にすでに予見していたライプニッツの慧眼には目を見張らされるものがある。ライプニッツも運動量が世界において必ずしも保存されないというニュートンの見解には同意するのだが、別種の力の保存が成り立たなければ、神の設計が不完全となるので、そのようなことはありえないと確信しているのである。この「別種の力」とは現代の言葉でいえばエネルギーである。したがって、世界を神の作った時計にたとえるのなら、この時計は神の介入や改革を必要とせず、完璧に動くものでなければならない。これがライプニッツの言い分である。」

(内井さんが昨年までいた京都大学科学史・科学哲学研究室発行のニューズレターNo.60 本書のテーマを講義している。)

長く引用してしまったが、ここまで書かないとちょっと要旨がわからないので。で、具体例は本書を読んでくださいということになる。

専門論文の内容を一般市民対象の新書に昇華しようとの努力は見られるのだが、思い切って非専門者対象と割り切った方がわかりやすかったように思う。ライプニッツの理論の説明にもっとページをさいて、その反映を相対論的宇宙論に絞った方がよかったのではないか(5章はいらないという考え)。

が、また、しかし、この種の本を誰が読むかというと、私のように科哲傾向が強い物理ファンではなく、宇宙論一般、物理一般に興味がある人、即ち物理オタクであろう。その人達を満足させる、インフレーション宇宙、素粒子論はなくてはならなかったのかもしれない(5章は必須という考え)。ネット書評を見ても、宇宙論の入門書として評価している人が多いようだ。そういう人には他の物理啓蒙書とは違う切り口なのでおもしろいかもしれない。

今のアマサイは、時間論を哲学と物理学から言及している著書を読みたいのである。と探してみたら

ホーウィッチ・ポール『時間に向きはあるか』丸善
がよさそうだ。

因みに内井さんはイラストが得意らしく、科学者の似顔絵?も自分で書いている。
因みに(その2)内井さんが訳したラプラス『確率の哲学的試論』岩波文庫を入手しようと思ったら、発刊してから10年も経っていないのに、目録から抹消され、品切れ絶版のようである。で、アマゾンのユーズドでは2500円という3倍以上の価格が付けられていた。
( ̄▽ ̄;)そういうのってどうよ、岩波さん。

この記事、karaokeguruiさんにお褒めいただいているようです。

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» 『空間の謎・時間の謎』 [宇宙とブラックホールについてのQ&A]
書評です。 内井惣七著 『空間の謎・時間の謎 宇宙の謎に迫る物理学と哲学』 中央公論新社 中公新書1829 261頁 2006年1月発行 本体価格\800(税込\840) http://www.chuko.co.jp/new/2006/01/101829.html 著者は、京都大学文学部の科学哲学の教授です。私はこの一つ前の著書『アインシュタインの思考をたどる − 時空の哲学入門』を読むまで存じ上げませんでした。 本書は、一言でいうと「時空の関係説」をめぐる歴史的な論争とその現代..... [Read More]

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