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January 15, 2007

書談:小池真理子『欲望』

Yokubou■『欲望』
著者 :小池 真理子著
価格 : \700 (本体 : \667)
出版 : 新潮社
発行 : 2000.4
bk1

青田類子は、学校図書館に20年勤める司書。何気なく入った写真展に見覚えのある光景を見つける。それは15年前、三島由紀夫邸を模したと言われる精神科医袴田の邸宅。袴田の年下の妻・阿佐緒は類子、邸宅の造園を行った正巳とは中学時代の同級生。音信不通だった三人を袴田邸が結びつける。そのころの類子は妻子ある男性・能勢と関係を続けていた。正巳は事故で不能となり、阿佐緒は夫袴田の愛情が信じられずにいた。

* * *

1970年代が背景なので、その時代の匂いは十分にするが、(当たり前であるが)現代的小説である。本当に面白い小説には感想などない。面白かった、感動した、ただそれだけである。それじゃ、記事にならないんで、なんか書くか。

こんなに「欲望」というものを見事に説明した小説もないんじゃないかと思う。男性の不能に至ってはなんで、そこまでわかるのか、と不思議でならない。肉欲が満たされることと精神が満たされることとの相違が能勢と類子、類子と正巳との関係から描かれる。

袴田は三島由紀夫の形式美を愛したというが、そのへんはイマイチわかんない。わかんないけど、三島が好きって公言する人ってこういう人かなって気がしないわけではない。

三島由紀夫がこの小説の複線となっているわけだが、複線は飽くまで複線であって、これは三島文学を知らない人の方がトクなんではないかと思う。文庫の解説者・池上冬樹が長々と三島について説明しているが、文芸評論家ってだからダメだよな。この小説を解説するのに、三島文学を語る意義なんて全然ないのである。引用されていた『豊饒の海』にだけちょいと触れればいいだけなんだ。まあ、評論家の小説解説なんてろくなもんじゃない。

って書いているうちに、歯がゆくなってきた。やはり、良い小説は良い小説としか言いようがなんだなあ。

これは、小説だけにしか表現しえないことだろう、とか思ったら映画化してんじゃん。

http://www.mediasuits.co.jp/yokubo/index.html

えっ、一昨年?全然知らない、覚えてない。興業的に失敗したんじゃないのか。そうそう、映画化したら、そのもののシーンばっかで、正巳の苦悩とか、類子の移ろう心情っては出てこないように思う。

こまいことだけど、ホテルニュージャパンとか、70年代当時のカフェバーとか、「小道具」の使い方がうまいと思った。

三文小説というネット評もあるけれど、私は、小説という形態の広がりとか奥深さを知らしめたすごい作品であると思う。

『愛ルケ』なんかよりよっぽど優れた小説ですけどね。人気blogランキング自然科学へ、ぷちっとな。【押す】
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