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August 09, 2007

書談:松本清張著『隠花平原』

Inkaheigen■『隠花平原』
著者 : 松本 清張著
価格 : ¥540 (本体 : ¥514)
出版 : 新潮社
発行 : 1996.2
bk1

住宅街で銀行員が撲殺される。物取りではなく、怨恨の線もつかめない。捜査チームは早々の解散となる。しかし、被害者の妻の弟、画家の山辺修二は他の誰かと間違いで義兄は殺されたのではないかと考える。近所に住んでいたという若い女性、その元に足繁く通っていたという小太りの男性。この二人がないか関係があるのではないかと推理した修二は、二人の行方を追う。そこには都市銀行と新興宗教との繋がりがあった。
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本書は、『砂の器』に次ぐような名作ではないかと思う。正確にいえば、名作になりそこねた。もっと被害者と容疑者の血縁関係を深く描いてほしかった。描いてはいるが、もうちょっとなのである。

だから、「本書は新興宗教の金脈を描いたところは、現代のようであり、30年前の作品とは思えない」という誤解に基づいた書評が流れてしまうのだ。本書文庫の解説をしている森村誠一も、未来を見通す卓越した予見力なんてことを書いているが(※)、アマサイは、清張読みの清張知らずだなあと思う。新興宗教うんぬんの事件はその当時から、それ以前から存在しており(小説中にもそう書かれている)、それを取り上げること自体は、「予見力」ではない。テーマは古いイエ社会で生まれてしまった非摘出子の行方である。戦前の世界では、それらの子供たちはある意味暗黙の了解の元生活していたが、新憲法の元では、困難な生活を強いられたことが問題なのである(それでも、ここに登場する男のように、何人も女性をひっかえとっかえ、子供ができたらしらんぷりというのは一般的とは思われないけれど)。別にアマサイが穿った見方をしているわけではなくて、それは明示的に描かれており、事件解決のカギにもなっている。タイトルの「隠花」はそれを示しているとしか考えられないし。

殿方はそういう心情描写を読んでもなんとも思わないのかしら。不思議だわ。鈍感すぎます。

風光明媚に描かれる地方の風景や、清張作品には破格的な、計10人、後半には連続的に5人殺されるのは、近年の2時間ドラマを思わせるが、それらは、読者を引き込むアイテムともなっている(っていうか、2時間ドラマや清張以降に続く推理小説の原点?)。


清張の小説は予見性があると言ってもいいのだけれど、どちらかという現代をキリトリ、それを人間ドラマに仕上げるのがうまいのでしょうね。

※解説を読み直してみた。森村氏は同業業者だからネタばれを避けたのかなあ、と言えなくもない。しかし、今更松本清張のミステリ小説論なんて必要ないぞ。表題の小説について解説してくれ。

『影の地帯』『紅い白描』とまた松本清張に凝ってます。夏は清張に限りますね?!今日も人気blogランキング・自然科学にぷちっとな。【押す】
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