字幕翻訳の世界
グーグルのヒットワード上位に戸田奈津子さんの名があった。
すわっ、ご病気でもされたのか、とあせった。
どうやら、誤訳問題のようだ。
でもなぜ今のタイミングで出るのだろう。
『指輪物語』の件はとみに有名なようだ。
「字数とか表示時間の問題ではない、戸田はわかりやすく訳す、ということから逸脱して「演出」をしているのだ。」
ふーむ、それはいかんだろうと確かに思う。
「字幕翻訳者は、黒子だろ、余計なことはするな。」
ふーむ、それはそうだ。字幕に限らず、翻訳者は原作を損ねることがあってはならない。
が、しかしである。
それを戸田さん個人「のみ」を責めるのはまずいんではないか。
小説『指輪物語』の原作者トールキンは言語学者であり、英文学の教授なのだそうだ。故に原作は言語学・文学の知識を駆使することでしか成立しえない内容である。外国語への翻訳に関してもトールキンが厳しい制約を課している。
日本語訳に関しても、その縛りがあるのだが、
72年の瀬田貞二氏の訳、瀬田訳に基づいた92年の田中明子氏の新訳でやっとトールキンの思想を網羅しているといえる。
(アマサイは、読んだことないので、全部先のURLの受け売り)
で、映画化。監督ピーター・ジャクソンは、トールキンの思想を理解した上で映画作成にあたった。
そんで、多くの国が、吹き替えを好むのに対し、日本人は、字幕が好きなんだねえ。
でさ、その原作につけた縛りを映画の字幕に求めるって酷じゃないのか。
求めてもいい。でも、日本の映画配給会社は、そのような事態に対処できないでしょう。最近は聞かなくなったが、日米英、同時上映とかあるじゃん。
配給会社としては、原制作国の封切り日と極力かけ離れない時期に放映したいんだよね。
だから、戸田さんは大型劇場にかかる映画の字幕の大半を請け負っている。
年40本くらい訳しているらしいよ。
監修の反映や訳語の討議なんてしている間ないでしょう。
まして、原作本があるものは事前に読むとかって、字幕翻訳者は神様じゃないよ。
年間数十本もやる翻訳者にとっては、one of themでしょう。手抜きとかじゃなくて、そこまでは要求するのは無理だ。
うん、先の批判文によれば戸田さんは、何回か「その訳語では、観客にはわからない」という理由で監修者の言葉を退けたと。
私がその原作のファンだった怒るだろう。
でも、字幕を引き受けたのは、映画『ロード・オブ・リング』であって、原作『指輪物語』の映像化ではない、というかそう言う認識はないんだよ。何百本も字幕つけてきたプロが「それではうけない」tpダメだししたら、従うしかない。
普通の翻訳者であると、恋愛小説もSFも歴史物もコメディも翻訳するってまずあり得ない。それぞれ、専門分野がある。
技術翻訳だって、コンピュータもやります、機械もやります、医学もやりますってことはないんだ。
それが、字幕翻訳者だと、それらが、全部1人がやることになっている。
問題があるとしたら、字幕翻訳者を育てない、映画配給業界だろうな。
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