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September 14, 2009

半導体開発のジレンマ

日本のエレクトロニクス産業は、高性能、高品質すぎる、とよく聞かれる。しかし、それと半導体産業の衰退とは、結びつかなかった。

Yunogami■『イノベーションのジレンマ・日本「半導体」敗戦- なぜ日本の基幹産業は壊滅したのか? -』
著者:湯之上 隆
価格: ¥1,000 (本体 : ¥952)
出版 : 光文社
発行年月 : 2009.8


湯之上さんの本を読んでそれがやっとわかった。
湯之上さんは日立のバリバリ半導体製造技術者であった。半導体製造はご自身が日立に入社したときがピークで、その後、現在にいたるまで、衰退の一途であるそうだ。そして、この半導体製造メーカー一掃とも言える、事業停止状態で退職を余儀なくされた。苦労の末、中堅メーカーに転職し、並行して、同志社大学の研究センターの研究員を数年なさっていた。ここで半導体業界を社会学的に分析していたのである。

本書は、その集大成とも言える。

湯之上さんはご自身が携わったDRAM開発の変遷を述べる。日本のDRAM製造は、独自の微細加工とインテグレーション技術で一気に世界NO.1に躍り出た。後追う者が居なかったのである。製品性能25年保証という金字塔を建てた。それは当然時代的にメインフレームに適用するものである。そして、数年後、PCの時代になった。PCのDRAMは四半世紀の保証など必要ない。しかし、日本の多くの企業は、高品質を守り、コストや歩止まりを重視する韓国企業に簡単に抜かれてしまったのである。

ここで、よく言われることは、
「日本は技術で勝っているのに、価格競争で負けた」ということである。

おい、待て、それはおかしいんじゃないのか。
これは、半導体製造素人のアマサイにもわかる、

「低価格競争も技術のうちじゃねーの」
ということである。

アマサイは、特許事務所さんに
「うちの業界は、もう新しい技術なんてないんです。小型化、軽量化、低価格です。発明も全部そのためです。時々の技術は導入しますが、それも、集積化を進めるにすぎません」
と言っている。まあ、そうでない製品も扱っているのだが。

成熟した業界はみんな安く作ることに流れている。それでも、安かろう、悪かろう、では困るわけで、高性能、高速処理は必須である。

で、DRAM業界は何をしとるんじゃ?

ちゃりんこが必要な時代に、オタク向けバイクを作っている、そんな感じではないか。

それじゃ、ダメだろう。

湯之上さんの話を聞いて、自動車部品メーカーの人がこう言ったそうだ。

日本の半導体って、ゴーンが来る前の日産自動車みたいだね。 ゴーンがやったことことは簡単なことだよ。原価管理部を作ったのさ、例えば、300万円のスカイラインを作るとしたら、原価管理部が原価を150万円と定めて作るのさ。そして、どういう技術で作るかは原価管理部が決める。最初は、技術者とけんかになったみたいだよ。なぜ、オレ達の素晴らしい技術を使わないのか、とね。でも、技術オタクの技術者と、ゴーンのどちらが正しかったかと言えば、一目瞭然だよね。 (本書53ページ:ところどころ編集)

いや、ゴーンはやっぱり偉いんだね。

でも、半導体業界は偉い人ほど、「技術で勝っている日本」の神話を信じたいらしい。湯之上さんの講演のあと、半導体メーカーの元社長が「お前の言うことは全て間違っている」と叫んだそうだ。

湯之上「なぜ、あなたは、私の言ったことはすべて間違っていると思うのですか?」

元社長「日本半導体の技術力は、実際に高いからだ」

湯之上「なぜ、そのような判断ができるのですか?どんな証拠があるのですか」

元社長「おれの直感だ」

湯之上「あなたがそのように直感で感じるには、何かの根拠があるはずです。どのような根拠があって、そのような直感を持たれたのですか」

元社長「日本の技術力は本当に強いからだ」

湯之上「・・・・」
(52~53ページ)

自分の会社でやっていたこと、それがいかに優れていたか説明できないこの元しゃちょーさんはダメダメである。

きっと、優秀な人ほど、イノベーションのジレンマに陥るのだろうな。

いや、恐いです。

特にメーカー勤めるみなさん、湯之上さんの本や論文を是非読みましょう。

湯之上さんはすごいなあ、この警告をするために「幸運にも」退職勧告されたのかもしれん。人気blogランキング・自然科学にぷちっとな。【押す】
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