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October 12, 2009

書談:田辺聖子『欲しがりません勝つまでは』

Hoshigarimasen■『欲しがりません勝つまでは』 ポプラ文庫
著者:田辺 聖子
価格: ¥609 (本体 : ¥580)
出版: ポプラ社
発行: 2009.6

アマサイ、思い出の書です。その名のとおり、田辺さん過ごした戦中の記録です。あとがきには、あの時代の生活記なるものを誰かが書き残さねばならないという趣旨のことが書いてあります。

田辺家は比較的裕福であったので、大阪空襲までは、楽しい学生生活が続きます。学友と小説集『少女草(おとめぐさ)』の作成にいそしんだりします。10代の女の子のやることはここ何十年かわらないのだなと思います。今で言うミニコミ誌と同じようなものでしょう。漫画ではなく文章が中心であったことくらいです。その当時の少女誌を真似ているのも似ています。『宮本武蔵』を読めば剣豪ものを、蒙古活劇を読めばモンゴル帝国の建設記をというように、当時のベストセラーにすぐ影響を受けてしまいます。今のコミュニティ誌を作っている子たちもそうでしょう。しかし、読んだだけで、類似の小説が書けるというのはすごい才能です。もう作家になるべくしてなった片鱗がうかがえます。

田辺さんは当時の少女がそうであったように、軍国少女です。日本軍の必勝を祈り、いざとなったらアメリカ軍と戦う心意気です。大人たちが、この戦争は勝てんとちゃうか、みたいことをいうものなら、激怒するそんな少女です。

楽しい、と書きましたが、実はそうでなかったのかもしれません。だんだんに男衆が戦地に出向いて、死んでいくの少女といえども知らぬはずありません。軍国少女でも演じなくては日常を耐え切れません。でも、そればかりでは、心が乾きます。少しでもそれを潤すために自分たちで作った物語に没頭していったのでしょう。

子供にまで「欲しがりません勝つまでは」と強いた戦争は、結局日本全国を焦土し、一般市民を多く殺戮します。

大阪空襲では、軍人が教えた消火法など役には立ちません。生き残った人さえ、流浪し、行き倒れになることも少なくありません。幸い田辺一家は全員無事でした。

その夜、どこから女性の声がします。「トミちゃーん、トミちゃーん」生き別れになった子供を捜しているのでしょう。荒地となった都市に母の叫びが響きます。

田辺さんはしばらく経って、あの声を戦争を起こした人に聞かせたい、といいます。

結局、多くの人命を失い、国民総ざんげという不可解なフレーズで戦争は終わりました。

どんな世になろうと生きねばならない、いや、生きていたい、それは、あの当時の日本人が同じように思ったのでしょう。

反戦文学であり、青春文学である本書は、田辺さんの代表作であると思います。

「芋たこなんきん」で主演をした藤山直美が田辺さんの役でドラマ化されたことがあります

「欲しがりません勝つまでは」という歌があるんですね。本書を読んで聞くとなんだか悲しい、切ない気持ちになります。
http://www.youtube.com/watch?v=azXI6GZ5AlE&hl=ja


1977年出版当時の高橋孟さんのイラストが入っていないのが残念です。人気blogランキング・自然科学にぷちっとな。【押す】
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