書談:永井路子『乱紋』
■『乱紋』上下
著者:永井 路子
出版:文春文庫
発行:1979年8月
価格:各700円
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大河ドラマで『江ー姫たちの戦国』を放映しなかったら手にとりませんでした。文春も品切れ絶版状態で、去年新装版を出したくらいでしょう。
日本史好きのアマサイも、お市の三番目の娘…ああ、秀忠の正室?平々凡々の人生だよね、としか思っていなかった。長女淀殿の人生が波瀾万丈すぎるから、、、いや違ったんだよ、末っ子の江の方がもっとすごいじゃん。いやいや、日々勉強ですな。
大河の田渕久美子版・江とはまったく違います(どう考えても永井版が史実に沿っている)。テレビは「のだめ」みたいなチャキチャキ娘じゃないといかんでしょう。そして、こちらは、義父・柴田勝家と実母・お市はすでにこの世にいません。これは永井氏が『流星』でお市の方の人生を書いているせいでしょう。三人とも秀吉の加護の元にいます。すべて江の待女おちかの目線で語られます。
なぜか末娘の江が一番先に嫁入りします。これは、秀吉が、お市の生き写しの茶々目当で、順次娘たちを追い出し、自分のものにするためといわれています。江は一度目は、尾張大野の大名・佐治与九郎一成、二度目は、秀吉の甥・小吉秀勝に嫁ぎます。そして、一度目は、秀吉と佐治とのパワーバランスが崩れ、佐治の領土が没収され出戻り、二度目は、秀勝の戦死によって夫婦生活が終焉します。おちかは、どんな運命に出会っても淡々と行動する江に落胆します。姫様がどこか鈍いのでは、。しかし、次第にそれは江の底知れぬ度量、今風にいうならば鈍感力に驚嘆します。江はなにも感じない知恵のない女性ではなく、何事も受け入れ怯まない強い女性であったのです。
それは心身共に頑丈、どんな状況でも多産そてしまう(?)生理にもあったやもしれまません。秀忠との間に三男五女を生むのです。
その上、徳川史上、正室から生まれた将軍は家光一人、正式な将軍の母は江しかなれなかった事実(あとは側室から生まれている)。それだけでも計り知れないものを持っています。
江なくしては、江戸幕府260年の歴史はなしえなかったかも。田渕氏がインタビューで答えていましたが、何故これほどまでの女性が今まで脚光を浴びなかったか、全く不思議です。本書『乱紋』の文庫化の後80年代に「お江ブーム」があってもよさそうなものです。
だが、しかし、21世紀も10年目になり、やっとお江の生き方を受け入れられる成熟した世のかなになったのかなとしなくもないです。
今読まなくては損をする一書でありますな。
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